2019.06.13親知らずの抜歯を検討している方へ
まず上顎と下顎で大きな違いがあります。
上顎に対して下顎骨は緻密骨といわれるほどしっかりとしているので、下顎歯も強固に生えています。
それに対して上顎骨は海綿骨といわれ軽石の様に空洞が多く散乱していますので、上顎歯もやや脆く生えています。
抜歯の際行われる麻酔を一般的には浸潤麻酔という手法で行うのですが、麻酔針を歯肉に刺入して骨面に当てるように麻酔液を浸潤させる方法です。
上顎骨は上記の通り海綿骨なので非常に麻酔液が浸潤しやすいため効きが素早く現れます。
それに対して下顎骨はなかなか浸潤しづらいので効きが奏効しない際、下顎孔伝達麻酔という下歯槽神経全体を麻痺させる手法がとられることもあります。
そして痛みの大きさを決定づけるのが歯牙の萌出方向です。多くの下顎智歯(親知らず)は水平方向にはえていてほんの一部だけ口腔内に萌出しています。
完全に骨内に埋伏していてくれればトラブルフリーなのですが、一部が萌出していることによって虫歯になったり歯周病の温床になるため抜歯が検討されるのです。
次に歯根の形態です。上顎智歯(親知らず)は単根が多いのに対して下顎智歯は複根(二根から三根)でカニのはさみの様に骨を強固に挟むような形態をしています。
ですので下顎水平埋伏智歯の抜歯においては、歯肉を観音開きに切開して骨を削ったり歯牙を3分割にするなどして患者さんも大変ですが医師も大汗をかきながら抜歯をします。
当然体は外科的な侵襲に多くの反応を示して、終わるころには腫れがでます。これが一番痛い抜歯になります。
対して上顎の完全萌出している智歯の抜歯はヘーベルというテコの原理を利用した杭で一部に力を加えると自らが抜けるようにあっという間に抜歯が完了しますので、一切腫れません。
これらのように痛みを決定するのは体に対する侵襲の大きさで決定されます。
唯一ありがたいことは抜歯などの人間が作り出した痛みに対しては、痛み止め薬がより効くといわれていますのでご安心なさってください。
一番大切なことは抜歯を回避できるように日々からのブラッシングに精をだすことです。